●あなたに「商品価値」はあるの?
|
|
|
次に大切なことは、「誰にでも『商品価値』はある」のだが、この「商品価値」に対する「お値段」がいくらになるかである。
企業のブランド力をお菓子の箱に例えれば、「お箱代」が企業のブランド力で、「お菓子代」がサラリーマンの等身大の「実力」というものだ。
言うまでも無く、「お菓子代」+「箱代」が広義の意味での「商品価値」。
反対に、狭義の意味での「商品価値」は、「お菓子代」−「箱代」。
この「お菓子代」である「等身大の値段(=価値)」が幾らにつけられるのかが「商品価値」というものだ。
|
「私には、キャリアと言うものなんか、何一つありません…。 ですから『キャリアの棚卸し』をしろと課題を出されても、何も書くことが出来ませんでした。 ですからこのように白紙でこの研修に来るしかありませんでした…。」
関西に本社を置く、老舗の化学繊維メーカーに勤務する、53才になる女性の受講者が講師に反発するように答えた。
彼女は高校を卒業して入社以来35年間、勤労部に属して工場の食堂にある社内売店に勤務している。
中高年社員を対象に開催されている、中高年社員の活性化をネライとした「キャリア・デザイン研修」に参加を指示され、研修に参加していたのだ。
この研修に参加する受講者には、参加するに当って「事前の宿題」が複数出されていた。
その中でも重要な「事前の宿題」に、入社以来担当してきた業務の整理シート、いわゆる「キャリア・シート」、別名「職務経歴書」の作成があった。
いま流行りの「キャリアの棚卸し」というシロモノだ。
講師がその受講者のA3版の「キャリア・シート」を覗き込むと、確かに全くの白紙状態で、わずかに所属部署名と氏名、そして入社時に配属され、現在も入社時と同じ部署名である「勤労部・庶務課」という文字が記入されており、担当業務欄に「食堂売店業務」とだけ書かれていた。
「これ以上、何も書けません。」
と言って彼女は開き直ったようにA3の用紙を講師に見せた。
講師とその受講者との間で、やり取りが始まった。
|
| 講 師: |
「ほう…、立派なキャリアをお持ちじゃあありませんか、あなたは。」
|
他の受講者は静まり返って様子を見守っていた。
|
| 受講者: |
「何が立派なんですか…。」 か細い声ながら確実に彼女は反発した。
|
| 受講者: |
「私をからかわないで下さいよ!」
|
| 講 師: |
「からかってはいませんよ。」
「立派なキャリアを持っておられるのは事実なんですよ。」
「ただ、これまでのキャリアの内容を、シッカリ分解しておられないだけなんですよ、あなたは。」
「ですからただ書くことが出来なかった、ということです。」
「書くことが出来なかったことと、キャリアが全く無いこととは全然違うのです。」
|
| 受講者: |
「………。」
|
講師のコメントを聞いているうちに受講者の態度に変化が見えてきた。
講師のコメントが続く。
|
| 講 師: |
「あなたは入社以来、一つの職場で働いてこられたんですよね。」
「35年間、働く場所を確保し続けて来られたのです。」
「他の人にとって替えられずにね。」
「これは、並みの働き方ではとてもそうはいかなかったことです。」
「あなたは、売店業務に携わってこられる中で、何か工夫や努力をされて来られたはずです。」
「それを些細なことでも構いませんので、一つ一つ思い起こしてみてくれませんか?」
「そうすれば、色々と書く材料が必ず出てくるはずですよ。」
「それが実は、あなたのキャリアと言えるものです。」
「さあ、思い起こして下さい、どんな工夫をされてこられましたか?」
「または、どのような努力や気持ちで、売店業務をされてこられましたか?」
|
| 受講者: |
「そうですねえ…。 先ずいつも心掛けているのは、疲れて工場から昼食に上がってくる人達のために、絶対に笑顔を絶やさないように、明るく元気に応対するということです。」
|
渋々、受講者が答え始めた。
|
| 講 師: |
「ホウホウ。 それですよ、私がお聴きしたかったことは…。」
「あなたの方から社員の方に話し掛けることはされておられるんですか?」
|
| 受講者: |
「ハイ。 話し掛けてその反応を見ながら対応しています。」
|
| 講 師: |
「なるほどお。 相手の心に寄り添いながら、品物を販売していると言うことですね?」
|
講師と受講者との間でやり取りが続く。
|
| 受講者: |
「夏場の時期は、胃腸が弱り気味になっているので、その人の体調を聞きながら冷たいドリンクを出したり、出さずに他の飲み物を勧めたりしています。」
|
| 講 師: |
「分かりました。 ところで商品の仕入や棚ぞろいはどなたかの指示で行っているのですか?」
|
| 受講者: |
「いえ、この仕事に着き始めの頃は係長の指示で行っていましたが、その後は任せられてしまったので、私が一人で行っています。」
|
| 講 師: |
「季節ごとにあなたが品揃えを考えて仕入れているのですか?」
|
| 受講者: |
「ハイそうです。 出来るだけ季節ごとに売れ筋の商品を掴んでおいて、欠品の起きないようにしています。」
|
| 講 師: |
「毎日、現金を扱うのも神経を使われるのではないですか?」
|
| 受講者: |
「はい、そうですね。 そのために通信教育で簿記も勉強しました。」
|
| 講 師: |
「分かりました。 今、あなたがお答えになった事柄を、キャリア・シートに記入していかれれば良いのですよ。 その一つ一つが実はあなたのキャリアなのです。」
「私にはキャリアが何も無いとおっしゃいましたね? でもこのように立派なスキルをお持ちではないですか。」
「売店業務をしていくに当って、どのような知識や事務作業やお客様である社員の方々に接する際に心掛けていること等が、あなたのキャリアそのものなのです。 お分かり頂けましたか?」
「対人折衝能力・対人関係能力・接遇スキル・在庫管理能力・現金出納力等々の力が発揮されて30数年間の長い間、上司から信頼されて立派に担 当業務の役割責任を果たされているのですよ。」
|
最初のうちは劣等感に根ざした理由から講師に反発していた受講者は、大きな発見をしたような喜びの表情と少々の照れくささとが同居したような表情で、ただうなずくだけだった。
|
|
|
このように、往々にして自身のキャリアの有無についても、自分の自己概念に縛られていて、自分のキャリアをキャリアと認識できないでいる人は意外に多いものだ。
「キャリア」を、ただ単に「時系列的な職務・業務歴」と捉えてしまうと、このような誤りを犯してしまう。
なんとももったいないし、損な話でもある。
|
|
|
一つの「業務」をしていくためには、その人が持つ色々な知識(基礎的能力)や習熟した能力を駆使しているもの。 果ては、その人の「人間性(=人間力)」で行っている場合もあるのだ。
要は、仕事をしていく上で、どんな力を活用しているのかを一度でも良いから、一つひとつ部品化して棚卸しし、点検チェックをかけてみると良い。
必ず、自分の「強み」を武器にしたキャリアというものが、浮かび出てくるはずだ。
その浮かび出た「部品」一つ一つに「商品価値」があるかどうかが重要なのだ。
「商品価値」とは、賞味期限が切れていなくて「市場で売れる部品」のことだ。
「市場にさらしても買い手がつくキャリア」のことだ。
単なる経験や体験を主軸とするキャリアだけでは、「商品価値」はないものに等しく、市場では値引きしても売れはしないのだ。
その会社にだけにしか通用しない(=売れない・使えない)キャリアや能力ではダメということ。
従って、日頃の担当業務の遂行を通して、自分の「強み」に、市場でも売れるよう、更に「磨きをかけていく」ことが大切なのだ。
会社がその業務遂行上、求めるレベル以上の研鑚をして、その“飛び出した能力”部分を「自分の付加価値」に仕上げて、自分の「商品価値」を外部でも「売れる商品」に仕立てていくことを心掛ける。
このことが「克つ! サラリーマン」に自分を改造していくポイントだ。
「今さら…」という諦めの気持ちを捨てて、「今から…」という心のギヤ−チェンジをするだけで「克つ! サラリーマン」の道を歩むことになると言いたい。
|
|
|
●自分の商品価値を査定をすべき時期(車検⇒人検)の到来を告げる「12の法則?」
|
| 1. |
あなたは、何故、会社をクビになったらどうしよう、肩叩きにあったらどうしようといった“不安感が時々頭の中をよぎる”のだろうか?⇒市場性に欠けるスキルの保有
|
| 2. |
現在の“給与に見合う働きをしていない”という後ろめたさを持ってはいないだろうか?⇒業績貢献性が低い
|
| 3. |
年令の割に“出世が遅い”という思いを常々もってはいないだろうか?⇒
|
| 4. |
会社や上司から、“余り期待されてはいない”と感じてはいないだろうか?
|
| 5. |
自分の担当職務の範囲が、なかなか“日の目を見ない領域ばかりを担当”させられていると感じてはいないだろうか?
|
| 6. |
自分が自信を持って誇れる“「中心的な職務領域」が無い”と感じてはいないだろうか?
|
| 7. |
定年までの残余の年数が、一桁台になった今、“精神的充実感が薄い役回り”しか与えられない状況が続き、“張り合いが保てない”自分を感じてはいないだろうか?
|
| 8. |
最近特に“保身に走っている自分自身”に気づくことが多くなっていると感じてはいないだろうか?
|
| 9. |
他社でも通じる“「売りもの」になるスキルを持っていない”と感じてはいないだろうか?
|
| 10. |
サラリーマン世界では、“自分はもはや「老兵」”であると感じていはいないだろうか?
|
| 11. |
わが社の“定年までは勤め切りたい”という気持ちが、だんだん強くなってきたと感じてはいないだろうか?
|
| 12. |
専門性が高い仕事や「身を入れて取組んできた仕事経験」が殆どこれまでに無いと感じてはいないだろうか?
|
|
|
以上書き示した「12の法則」で、3つ以上該当するのであれば、すぐにも「車検」時期、イヤ、「商品価値の査定=人検査=キャリア力検査」時期が来ていると判断すべきだ。
|
|
|